『白鷺城/ホワイト・キャッスル 対決』プレイレビュー:“2025年最高の2人専用ゲーム”と呼ばれるその実力は?

『白鷺城/ホワイト・キャッスル 対決』プレイレビュー:“2025年最高の2人専用ゲーム”と呼ばれるその実力は?

『白鷺城/ホワイト・キャッスル 対決』プレイレビュー:“2025年最高の2人専用ゲーム”と呼ばれるその実力は?

今回は「2025年今年最高の2人専用ゲーム」と海外の有識者たちから称されている『白鷺城/ホワイト・キャッスル 対決』を遊ぶこととなった。

その評判は真なるものか?

第一印象:作り込み・密度がすごい!

セットアップされた『白鷺城/ホワイト・キャッスル 対決』「作り込みがすごい……」

まず驚いたのは、この箱の大きさからは想像できないほどの密度だ。

コンパクトなサイズ以上の“濃厚なゲーム体験”という噂は聞いていたが、盤面を見た瞬間にその一端を実感した。

そうしてルールを読み進めていくとさらなる衝撃が待っていた。

「このゲーム……あの盤面の情報量なのに、意外と短いのでは?」

往路ラウンド6手番、帰路ラウンド6手番の計12手番。

往路ラウンドの各手番でやることはシンプル

  1. 【任意】〈配置転換タイル〉を1枚捨てて、城内の〈職務タイル〉(アクション内容)2つの位置を交換する
  2. 自領ボードから〈石灯トークン〉を1つ取り、6つの〈施設タイル〉の中から1つを選んで配置する(同色アイコンの〈施設タイル〉、もしくは既に同色のトークンが置かれている〈施設タイル〉には配置できない)
  3. 〈石灯の報酬〉を得る(資源:鉄/食料/真珠母 等)
  4. 配置した施設に隣接するアクション2つを実行する

例:(ルールブックより)

……それだけである。

だがシンプルゆえに、全ての1手番が重い。各手番で必ず一定以上の利益を得ることが重要だ。

なるほど、理解した! 早速遊んでみよう!

このゲーム……考えることが多い。そして考えるのが気持ちいいぞ!

ルールブックだけではわからない戦略の深みがそこにはあった。

戦略の幅と悩ましさ

  • 優先すべきは今の得点方法を伸ばすか? そのための資源確保か?
  • それとも新しい得点方法を開拓するか?
  • 〈石灯トークン〉の配置制限を活かして相手を妨害することもできる
  • だが1手番は貴重。本当にここで妨害すべきか?

悩ましい。だが悩むのが心地よい。

このゲームの肝たる部分は変化していく盤面と状況への対応にある。得点法は複数あるので、今の盤面や、自分、ひいては相手の状況を読み、自分に利する状況を整えていくことが必要になる。

これを考えるのが楽しい。

ただもちろん、これは2人用である。相手も同じように勝ちを狙ってくる。相手の1手番によって、こちらの次の1手番が変わることもあった。

こういったゲームの場合、3人、4人とプレイヤー人数が増えていくにつれて、盤面の変化が激しくなって、考えてきたプランがすぐに崩れてしまう。

だがこのゲームは2人用であるため、そういうこともなく、自手番までの待ち時間も少ない。

また配置制限もあり、選択肢が徐々に狭まるため、今自分が何をできるか、何をしたら得なのかがわかりやすい。しかしそれは裏を返せば、相手が何を狙っているかがわかりやすいのである。

そのため〈配置転換タイル〉や配置制限を利用したり、欲しいであろうカードを先に獲得することで、邪魔をする……と悪巧みもできる。

考えるのが気持ちいいのは、つまり「どうやったら最適化ができるか」に良い意味で頭を悩ませることにある。

とそうこう思いつつ往路ラウンドが終わり、帰路ラウンドに突入していった。

帰路ラウンドで変化する戦略

帰路ラウンドとは

  1. 往路ラウンドで配置した〈石灯トークン〉から任意の1個を回収(相手のものも可)
  2. 〈石灯の報酬〉を獲得する(資源等)
  3. 〈石灯トークン〉が置かれていた施設タイルに隣接するアクション2つを実行する

例:(ルールブックより)

あれ? 往路ラウンドって、今だけ見て石灯トークンを置いてたけど……。

帰路ラウンドは「やれる回数が限られたアクション」を、しかも相手と取り合うってことか。

すなわち、帰路ラウンドとは──自分達が作り上げた盤面を相手よりどれだけ把握できているかの戦い、 往路ラウンドで自分たちが撒いた種を、どう刈り取るかの勝負だ。

盤面への理解が浅いと、

  • 絶妙に資源が足りない
  • やりたいアクションができない
  • 資源が溢れてしまい、新たに獲得できなくなる

と歯がゆさを多く体験することになる。

しかし、ここでも往路ラウンドで感じた「変化する状況への最善手を探す」心地よさは薄れることはなかった。

いや、むしろ行えるアクションの制限がより分かりやすくなった帰路ラウンドはさらにその感覚が激化していったのである。

特に既存の得点法に固執するか、新たな得点法に舵を切るか? そのひりついたように思考が巡っていく感覚は得難いものであった。

最終得点フェーズへ

そうこうしているうちに……ゲーム終了!

結果は……(筆者は青プレイヤー)

見事に負けた! 対戦相手が〈石灯の報酬〉で定期的に即時勝利点を稼いでいたのが最大の敗因だ。

(↓黒の〈石灯の報酬〉から、赤い扇アイコンで即時勝利点を得ていた対戦相手の自領ボード)

悔しい。しかしそれがよい。

悔しかったが、楽しかった。

なぜか? それは「次はこうしよう」「あの選択が悪かったのか」と、「遊ぶときにはこうしたら勝てるかもしれない」と分析ができたからだ。

考える楽しさの余韻はゲームが終わった後も続いた。

そう、このゲームの本質は“詰め将棋的な一本道の最適解探し”ではない。

変化し続ける盤面にどう適応し、最善を探すかという臨機応変な勝負なのだ。

運要素について

2人用ゲームが好きな読者なら、こんな経験はないだろうか?

大好きな2人用ゲームを友人に布教した。
自分は会心のプレイで勝利!
……した結果、友人は「もういいかな」と興味をなくしてしまった。

これぞ 2人用ゲーム最大の短所――実力差問題である。

たとえば筆者はどう頑張っても将棋・チェスの名人に勝つことはない。そこを埋めるのが「ランダム要素」である。

ランダム性があるからこそ予想外の展開が起き、実力差を縮められる。

しかし強すぎると「自分の力で勝った気がしない」。筆者が坊主めくりで名人に勝っても、それは実力で勝ったことにはならない。

その間の「ちょうどいい塩梅」を調節していくのが、2人用ゲームを作るときの難しさである。

『白鷺城/ホワイト・キャッスル 対決』は一部で「運要素が強い」を言われているが、筆者はそれほど強いとは感じなかった。

もちろん公開されるカードの運等もあるが、決してそれが全てではない。一箇所の運のせいで負けるということはない。

むしろランダム性が「じゃあこの状況でどう勝つ? 」という思考の楽しさを引き出していた。

ゲームには運がつきもの。しかし、それを制してこそ、ゲーマーではないだろうか? と思いながら敗北の悔しさをやわらげたのであった。

総評

  • 運要素と戦略のバランスが絶妙
  • 現在の状況に対して、最適な1手番を考えるのが楽しい
  • 短時間で濃密な勝負を味わえる

「2025年最高の2人専用ゲーム」と称される理由も納得である。

一度ぜひ遊んで、そのクオリティを体験してほしい。

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