ファイナル・ガール
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『ファイナル・ガール』ジャーナル第2夜:スラッシャー映画は1970年代から
数々の名作ホラー映画にインスパイアされたボードゲーム『ファイナル・ガール』。『ファイナル・ガール』で遊ぶ前に知っておくと楽しさが倍増する、ホラー映画の知識をCMON JAPAN映画マニアのスタッフが解説いたします。 第1回はスラッシャー映画とファイナル・ガールについて解説しました。 今回は、スラッシャー映画の歴史について、簡単にご紹介します。 スラッシャー映画の始まりは1974年 スラッシャー映画とは、主に殺人鬼(しばしばマスクを着用したり、顔を隠したりする)が複数の被害者を残虐な方法で殺害していくホラー映画です。 スラッシャー映画というジャンルを確立させた最初期作は『暗闇にベルが鳴る』(1974年カナダ映画)とされています。クリスマスに正体不明の人物からかかる、執拗ないたずら電話と次々と消えていく登場人物たちを描くホラー映画です。ここで既にファイナルガールや犠牲になる友人たち、謎の殺人鬼と後にスラッシャー映画の定番となる要素が登場しています。 そして同年『悪魔のいけにえ』(1974年アメリカ映画)がスラッシャー映画を一躍有名にしました。圧倒的な低予算ながらも挑戦的な試みを行った本作では、アメリカのテキサスの田舎を舞台に、人面から剥いだ皮で作ったマスクをした大男の“レザーフェイス”がチェーンソーで若者たちを襲います。後のあらゆるホラー作品に影響を与えた作品と言われています。 『悪魔のいけにえ』で表現されている「アメリカの嫌な田舎の雰囲気」は映画界のみならず、ホラーというジャンルそのものに多大な影響を与えました。ゲーム『バイオハザード7』に出てくるベイカー家や、ゲーム『Dead by Daylight』ではレザーフェイス本人がゲスト出演しているだけでなく、『悪魔のいけにえ』のシーンと同じように犠牲者をフックに吊るします。 その後『ハロウィン』(1978年アメリカ映画)が大ヒットし、スラッシャー映画ブームが到来します。特に白塗りのマスクを被り、包丁を片手に襲う『ハロウィン』の殺人鬼であるブギーマンことマイケル・マイヤーズは特に人気が高く、今でもハロウィンに彼の仮装をする人が多くいるそうです。 ブギーマンの仮装 by.Mooshuu サンディエゴ,CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons キャンプ場はスラッシャー映画の人気舞台 キャンプ場を舞台としたホラー映画は数多く作れらています。そんな「キャンプホラー」の代表作といえば、『13日の金曜日』(1980年アメリカ映画)シリーズで間違いないでしょう。とても有名な作品なので、ご存じの方も多いと思います。他にも『サマーキャンプ・インフェルノ』(1983年アメリカ映画)や『バーニング』(1981年アメリカ/カナダ合作)などもキャンプ場を舞台とした作品です。 キャンプ場とは、都市とは遠く離れ、隔離された場所であることが大半です。そう! 数々のスラッシャー映画に共通する要素である「クローズド・サークル」です。 明るい昼間は、皆でワイワイ、楽しくキャンプをしていても、日が落ちると打って変わって、夜には灯りがほぼ無く、深い闇と自然が広がっています。キャンプに行ったことのある方や、自然の多い場所で育った方なら、この恐さには覚えがあるかもしれません。 この多くの人が身に覚えのある、夜の自然の恐怖が、スラッシャー映画の恐怖をより際立たせているのかもしれません。 『ファイナル・ガール』のフィーチャーフィルムボックス※の1つである「血みどろキャンプの襲撃」の舞台も「ハッピー・トレイル・キャンプ場」というキャンプ場です。 陽気なキャンプ場の名前と、おぞましい惨劇のギャップに、ぞくっとしますね。 ※... -
『ファイナル・ガール』ジャーナル 1夜目:観だしたら、止まらない!スラッシャー映画とは
数々の名作ホラー映画にインスパイアされたボードゲーム『ファイナル・ガール』。そのルーツを映画マニアのCMON JAPAN スタッフの考察を通して紐解く連載、第1回目です! これを読めば『ファイナル・ガール』がもっと楽しく遊べること間違いなしです! 「ファイナル・ガール」は「スラッシャー映画」の映画用語 このゲームのタイトルでもある「ファイナル・ガール」は、主に「スラッシャー映画」というジャンルのホラー映画における登場人物の役割に対して使われている映画用語です。 スラッシャー映画の多くは、次の特徴が共通する場合が殆どです。 スラッシャー映画の特徴 殺人鬼 スラッシャー映画の真のスターといえば、ジェイソンやフレディに代表される、超人的な力や異常な執念を持った殺人鬼です! 彼らは殆どの場合、人間と同じ形をしており、物理的に標的を追い詰め、そして残虐な方法で犠牲者を増やしていきます。また非人間性の象徴として、メイクや仮面などで顔が認識できない場合が多いです。 若者を主なターゲットにする 被害者は主に若者(ティーンエイジャーや大学生)で、一人きり(カップルなら2人)になったところを襲われるケースが多く見受けられます。これらの若者はしばしば、性的に奔放であったり、薬物やアルコールを使用したりなど、道徳的に反する言動をしています。 残虐な殺害シーン スラッシャー映画は、その名の通り、「スラッシュ(切り裂く)」という行為に重点を置き、鋭利な刃物をはじめとするその他道具を使用して残虐に殺害するシーンが多く見られます。 クローズドサークル 物語の舞台は、現代社会から隔離された場所(キャンプ場、古い屋敷、森の中の小屋など)であることが多く、狙われた人たちは逃げ場のない閉鎖的な状況に置れることになります。これにより、外から助けを呼ぶのは困難であり、自分たちの力で殺人鬼と対峙するか逃げ延びるしかない状況へ陥っていきます。 ファイナル・ガール 多くのスラッシャー映画には「ファイナル・ガール」が登場します。詳細は後述。 「ファイナル・ガール」とは スラッシャー映画における「ファイナル・ガール」とは物語の最後まで(多くの場合は唯一)生き残り殺人鬼やモンスターと直接対決する女性主人公を指します。 数々の映画でファイナル・ガールが登場する中でパターン化された共通点が生まれました。(注:これを満たしているからといって、必ず生き残れる保証はありません。最近の映画はマンネリ打破のためにあえて、当てはまらないキャラがファイナルガールになる場合もあります。) 「ファイナル・ガール」達に共通する特徴 道徳的に優れている ファイナル・ガールはしばしば精神的に自立している、芯の通ったキャラクターとして描かれます。彼女たちは、映画内で絶対に死亡する友人たちのように、性的に奔放だったり、薬物やアルコールに溺れることなく、死亡フラグを絶妙にかわします。 知性的で臨機応変 ファイナル・ガールは知性と状況対応力を持っていることが強調されます。力では勝てない相手に対して、彼女たちは危険を察知し、それに応じて行動を変えたり、トラップを仕掛けたりします。彼女たちの生存能力は、物理的な力ではなく、知恵や戦略に依存しています。 成長していく 物語の進行に伴い、ファイナル・ガールは恐怖を克服し、誰かを守るために危険に立ち向かうなど、キャラクターとして成長することが多いです。映画のクライマックスでは、彼女たちは恐怖の対象と直接対峙します。その結果、勝つ場合も負ける場合もあります。 頑張れ!「隣のお姉さん」...